実家帰りのひととき
しばらく前から実家の母から着信やメールが届いている。
それをなにげなく無視し続けてきた。何の悪気も無く。
特に意味のないものばかりだったからだ。
何でメールして、でんわをかけても返信がないの?
教えてください。
心配しています?(泣顔)
どうしているの!
仕事が忙しくても暇のときはあるでしょ、
声をきかせてください。
待っています
……。
母には悪いが爆笑してしまった。
まるで恋人に振られる寸前の女みたいだと思った。
…仕方がないので実家に帰った。
四季風が25歳まで棲んでいた旧母屋。今はとても古く誰も住んでいない。
旧母屋も石蔵も両親の所有するものではないため、屋根が壊れて危険でも手を加えることが出来ないでいる。
人に歴史あり。
父と母の人生は色々だった…。
子どもだった私も、まあ、よくここまで生きてきたなと…。
地獄を見たような者は、もう望むものはありません。
今、この一瞬が一番なのですから。
実家から帰って、庭の苺を摘んだ。
スナックエンドウが誰にも収穫されずに巨大化している。
きっとサヤは堅くなって食べられないだろう…。
だから、中のグリーンピースだけ取り出して、調理しよう
と思っている。
それから、咲き終わったナニワノイバラの花を摘んだ。
結実する前に摘まないとね。