インスタントコーヒーフレンズ(1)


あとうっちょに会いたいな〜。


あとうっちょっていうのは同級生。
もともとは刹の彼氏、で、私の良い友人。ううん、悪い友人かな。
高校は別だったんだけど、行動力のある人で、強くて、ちょっとカッコ悪くて、あったかい人。


土曜日は2週に一度、家に帰らなかった。
学校が終わって制服のまま、刹と宇都宮行きの電車に乗る。
駅周辺は、ロビンソンがオープンしたばかりで、とても暑くて、賑やかだ。
宇都宮に着くとよしえちゃんが待っていてくれた。
よしえちゃんていうのは、刹をあとうっちょに紹介した同級生。
宇都宮に住んでいて、学校もこっちだから会う機会は少ない。
1時間に1本しかない来ないバスの時刻表を確認して、デパートの地下へ行く。
よしえちゃんは私よりずっと大人っぽくて、女っぽくて、かわいい。
髪が長くてお嬢リボン。前髪はいつもクルンってしている。
でも片っぽの手をスカートのポケットに突っ込んだままジェラートを舐めるし、タバコも吸う。
陽射しも、街の人込みも、キラキラしてた。


バスにはどのくらい揺られただろう。大きな橋と、大きな河を越えていた。
バスを降りると、夕暮れのきれいな田んぼの風景が飛び込んでくる。稲の苗が伸びて、風に揺れるとまるで黄金色のさざ波みたいに見えた。
バス停の前にガソリンスタンド、隣にコンビニがあった。そしてバス停とコンビニの間に電話ボックス。あたしたちは、そこからあとうっちょに電話をする。
「今、バス停についたからぁ。」
あたしたちは、そこから歩いていく。
あとうっちょの家に。


あとうっちょの部屋は半ばたまり場。学校が終わって、アルバイトが終わって、みんなが集まる。
テーブルにはいつもインスタントのコーヒーとミルクと砂糖が置いてあった。英国調の絵が描いてある茶色の厚いカップも、銀のスプーンも、いつも使うものは決まっている。コーヒー2ミルク2砂糖2。あたしと刹の担当だった。
笑っちゃうけど、そこに集まるみんなのコーヒーとミルクの分量を覚えたね。
夜ご飯をどうしていたのか、思い出せない。
ミルク入の甘いコーヒーだけで朝まで騒いでいたのかな。


あとうっちょは、覚えてるかな。


あとうっちょに、会いたいな。