インスタントコーヒーフレンズ(4)


‘123号線をまっすぐ行く。’
「123ね。」
月子の左手にはスタジオまでの案内書きのメモ。
一昨日、イシちゃんから教わったものだ。
教わったと言っても電話での説明だけで、地図は無い。

‘橋を渡る。’
「‘橋’ってこれ〜??このドブ川みたいなのの橋??」
うす緑色に濁った流れの殆どない川を過ぎる。
学校が終わって電車に乗り、宇都宮の駅に降りると街の様子はすっかり夕方の忙しさに包まれている。
夕食の買い物袋を下げた急ぎ足の主婦。オレンジ色の眩しい陽射し。一方から一斉に流れてくる同じバックを持つ高校生の自転車とすれ違う。

‘交番を過ぎる。’
「あ!これこれ、交番ね。」
ヘンな形の交番。
ガラスに薬物乱用ダメ。ぜったい。のポスター。

‘坂がある。’
「‘坂’って、この道ぜ〜んぶ、緩い坂道じゃん。」
月子はずんずん歩く。
待ち合わせの時間に間に合わなくなってしまう。

‘右側の楽器屋で待ってる。’
「楽器屋、楽器屋…。」
「!?」
「なんか行き過ぎてるかも?」


街並は、歩くとすぐに分かった。
でも「ぜんぜん違うじゃん!」

「…もっと手前だよ〜(泣)」
イシちゃん、適当に教えたな。